
溫室レポート : 『城市文化内科(Urban Cultural Clinic)』
台日文化交流プラットフォーム「溫室」を設立してちょうど1年が経ったこの秋、私たちは『城市文化内科(Urban Cultural Clinic)』と題したイベントを開催しました(10/30-11/3)。これまでの溫室の活動をより多くの方に知ってもらうとともに、新たな繋がりや新たなプロジェクトテーマを見つけることを目的に開催した5日間。現地に着いてから様々なハプニングに見舞われつつも、、台湾のパートナーのみなさんの協力によって、無事に終えることができました。この記事では、そんな2024年度の『城市文化内科』を振り返り、記録しておきたいと思います。
『城市文化内科』
そもそもクリニックをテーマに掲げたのは、暮らしている人たちのリアルな声を拾い上げたいという考えがあったからです。都市更新(=都市開発のこと)によって都市の様子が急激に変化する中、実際に暮らしている人たちの悩みや不安が取り残されているのではないでしょうか。今回は、そうした都市が抱える課題を病に見立て、具体的な症状を見つけることを目的とした展示会を開催しました。また、クリニック形式のトークイベントも実施しました。
◾️展示について



▲展示会場の様子(上部)/私たちが制作した『自己発見カード』で遊ぶ参加者の様子(中部)/三星研究室が制作したピンポンゲームで遊ぶこどもたち(下部)
今回は、台北の中心地に位置する文化施設「華山1914文化創意産業園区(中7A)」をイベント会場として利用。絵描きのMariya Suzukiさんが描いた台北の街と溫室の活動を記録したパネルで空間を構成しました。展示物の主なテーマには、子どもの宿題や台湾と日本のデザイン教育など。参加者には、パネルや各テーマに沿った本をヒントにしながら台北の街での暮らしを振り返ることで発見した都市の病を診断書に記入していただきました。
「都市と農村の資源分配が不平等であること」「台北の人たちは冷淡であること」「交通量が多く、どこに行っても混雑していること」「収入の低さと生活コストの高騰」など、多くの参加者が、台北の住民の格差問題や地域コミュニティの希薄さを指摘。日本の都市が抱える病と類似していることを改めて実感しました。週末には1日で200名以上が来場し、溫室の活動を知っていただくとともに都市での暮らしおける悩みや課題について共有していただく機会となりました。
また、5月に溫室で開催した展示会『製做後思考(つくってから考える)』のゲストとして訪台した三星安澄さんと三星研究室の学生たちの制作物も展示しました。台湾の夜市で見かけるピンポンゲームと瓶立てに使用する道具をリデザインして、より面白く新鮮な遊び方を提案しています。こどもたちはもちろん、大人も懐かしい様子で楽しんで遊んでいました。
◾️トークイベントについて


▲11/3(日)に開催したトークイベントの様子
今回のトークイベントは、「クリニック」形式で開催。1日目は農業、2日目は不動産をテーマに、台湾と日本からのゲストがそれぞれ「医者」と「患者」という設定の中で共通の社会的問題について議論を行いました。来場者とともに、それぞれの分野で直面している課題を共有し、社会問題への実践的な解決策を模索しました。
(日本からのゲスト:小泉寬明さん、吉里裕也さん、三星安澄さん)
(台湾からのゲスト:陳嘉勳さん、 何佳穎さん、謝國清さん、 柯伯麟さん、葉小文さん、邱于真さん)
◾️思いがけない経験も

▲展示パネルに書かれた問いの一つ「酒は世界を繋げることはできるか?」
実は会期中、30年ぶりの最強台風と報道されるほどの大きな天災に見舞われました。台北市政府から学校と業務停止の通知が発表されたため、私たちも10/31の展示会中止を余儀なくされました。ゲストの一人として参加予定だった三星さんもやむをえずフライトをキャンセルすることに。
日本では、各組織の判断によって休暇が決まることはあっても、なかなか政府から外出禁止令が出されることはありません。(ある意味)とても新しい経験でした。その後は無事に台風が過ぎ去ってくれたので、残りの3日間の運営に努めることができました。
◾️まとめ
今回、クリニックというテーマ設定は台湾の人たちからとても好評でした。深刻なものとして捉えられがちな社会問題を私たちの日常と結びつけて考える一つの方法として有力だったのだと思います。しかし、クリニックと展示物との繋がりが曖昧であったり、展示とトークイベントの相互作用が弱かったりと、様々な改善点が見つかったことも事実です。
来年度の計画として、すでに考え始めている第二弾『城市文化内科』では、今回の改善点を活かしてリベンジしたいと思っています。今回参加者に診断していただいた都市の病に対する処方箋を考えるとともに、多様なバックグラウンドを持つ人たちがより安心して通院できるようなクリニックの環境を整えていきます。
展示にご参加いただいたすべての来場者、展示を支えてくださったパートナーのみなさん、ありがとうございました!また来年もよろしくお願いします!

協力:Mariya Suzuki, Alife, Plan b, Sleepy Tofu , Shi Pei Yin, Dai Kai Cheng, Zheng Dao,
写真提供: Masato Sata
◾️溫室 by SHIBAURA HOUSE

2023年秋にオープンした温室は、台湾と日本をつなぐ文化交流プラットフォーム。「ここは植物のない温室 育てるのは私たちの創造力」をコンセプトに、台日で共通する社会課題について、ユニークな方法をみんなで考え活動するための拠点として運営しています。
SHIBAURA HOUSE
