
溫室レポート : 三星研究室 in台北
5月末から6月初旬にかけて溫室では、昭和女子大学でプロダクトデザインを教えている三星安澄さんにご協力いただき、展示会と研究プログラムを行いました。今回の目的は、台湾の人たちと一緒に遊びながら、つくりながらデザインについて考えること。来場・参加してくださった方、三星さん、私たち溫室、それぞれに新たな気づきや学びがありました。
三星安澄+三星研究室展「製做後思考(つくってから考える)」
今回は、三星さんご自身と昭和女子大学の三星研究室の学生の合同展。「クッキー」「プランター」「サングラス」「台灣夜市遊戯」など私たちの身の周りにあるものを題材とした合計6個のプロジェクトを紹介しました。そして、タイトル「製做後思考(つくってから考える)」は、三星さんの研究スタイルを表しています。考えるよりまずは手を動かしてみること。デザインに限らず、「好奇心に従って、とりあえずやってみる!」というこども心を思い出す機会となったのではないでしょうか。

展示会場全体(Photo by Masato Sata)
会期中は、展示を観にいらしてくださった方とデザインや教育についてお話しました。
ご家族でいらしてくださった一人のお母さんは、「私は、デザインには詳しくないけど、学びのあり方として、三星さんの研究スタイルはとても面白いと思う。今の台湾の教育に必要な要素なんじゃないかな。」と話してくれました。台湾の教育の中では、まだまだ先生が答えや回答方法を全て教えてしまうことが多いため、先生とこどもたちが一緒に楽しみながら活動し、より良いものを作り出していくプロセスが重要だと改めて感じたようです。


「クッキースカルプチャー研究」(上)と「紙サングラス研究」(下)(Photo by Masato Sata)
また、三星さんのSNSなどを拝見していても、常にこどもや地域の人たちとの交流の中でデザインのお仕事をされていることがわかります。問題解決や広告のためといった明確なゴールを目指したものではなく、日常的の中で制作されたプロダクトが、他の人に勇気を与えたり、新たな交流の誕生につながることを目の当たりにしました。
研究プログラム「これもクッキー型である -台湾編」
今回の展示期間中には、台湾から(三星研究室の)研究員を募り、東京でも行っているプロジェクト「これもクッキー型である」の台湾編も実施しました。この研究は、通常ではクッキー型としては利用されないような様々な素材や日用品から、クッキーを生成するための「型」をつくる試みです。
三星研究室の研究生として活動してくださった11人の参加者は、台湾でデザインを学んでいる学生や教えている先生たち。このプログラムを通して、クッキー型のデザインだけでなく、デザインやものづくりに対する取り組み方自体へのアップデートがあったようです。

第1回目の講評会の様子(Photo by Masato Sata)
1週目から2週目にかけては、それぞれが選んだクッキー型(スリッパや洗濯ボールなど)の特徴を拡張することを目指して活動。2週目から3週目は、より安定的に綺麗な形を作るための方法を探ることを主な目的としてクッキーを焼き続けました!
とても印象的だったのは、各参加者への三星さんのポジティブなフィードバック。個性や得意なことなどを丁寧に拾ったコメントは、初回では「これでいいのかな、。」と半信半疑ながらに取り組んでいた研究生たちにとって制作を続ける自信とモチベーションになっていたように思います。回を重ねる毎に、焼き上がったクッキーの形や輪郭が "クッキーリ! ハッキーリ!" しました!


1週目(上)と2週目(下)に焼いたクッキー(Photo by Masato Sata)
既存のプロダクトを形成している小さな要素(機能や面白さ、美しさなど)を見つけて拡張していくことが得意な三星さん。それは、学生との向き合い方においても同じで、どんな作品に対してもそれぞれが持っているポテンシャルを拾い上げて、作品のクオリティと制作のモチベーションの向上につながるコメントをしていました。
三星さんのそうしたコミュニケーションを通じて、参加者の多くが「ものづくりの楽しさを思い出すことができた」と話していました。また同時に三星さん自身も、台湾の参加者たちが楽しんでいる姿や研究に対する情熱に終始感動されていました。


制作したクッキー型を使って実験中の様子(上)と第3回目の講評会の様子(下)(Photo by Masato Sata)
技術や知識にとらわれず、個性や可能性を制限しない。こども心を取り戻しながら取り組むことのできる三星さんの研究は、決して楽ではない教育(デザインを含む)を受けてきた多くの台湾の人たちにとって新鮮でとにかく楽しいようです。この研究を通して日常生活での視野も広がったというコメントも。三星さんがこのクッキー型の研究を始めたように、台湾の人たちもまたこうした日常に潜むワクワクや関心ごとから新たな研究が生まれるような可能性を感じました。
また、「海外から台湾にゲストが来てレクチャーを行ってくれることは頻繁にありますが、実際に一緒に制作や研究活動を行うことは初めての経験でした。三星さんの「つくってから考える」というコンセプトもこの3週間を通して吸収することができました。」との感想もありました。日本のゲストからの一方的なレクチャーではなく、台湾に暮らしている方たちと共に連続的な活動ができ、温室としてもより深い文化交流活動ができたのではないかと感じています。

初日の集合写真。三星さんと学生4人も現地に来て参加しました。(Photo by Masato Sata)
三星研究室in台北は、まだスタートしたばかりです。次回の構想も練り始めているようなので、また新たなメンバーも加わって活動できることを楽しみにしています!
