
『機械的景観 ―テネシー川流域における国家統治と環境』[9/15]
SHIBAURA HOUSE(東京都港区芝浦)では、2026年9月14日(月)から20日(日)まで、米国テネシー大学ノックスビル校の建築研究者マイカ・ルーテンバーグ、アヴィゲイル・サックス両氏による展覧会『機械的景観 ―テネシー川流域における国家統治と環境』を開催します。
また会期中の9月15日(火)には両著者を招いたトークとレセプションを実施。本展は両氏の近著『The Mechanized Landscape: Statecraft and Environment in the Tennessee Valley』(Applied Research + Design Publishers, 2026)をもとに、20世紀アメリカ最大級の地域開発を「地図」と「写真」のふたつのアプローチから読み解くものです。トークイベントではその具体的な内容について著者自らが説明します。
■ 本展について
テネシー川流域における資源保全、農村開発、そして農業改良を監督するため、合衆国政府は1933年に「テネシー川流域開発公社(テネシー・ヴァリー・オーソリティ TVA)」という連邦機関を設立した。この流域はアメリカ南東部の広大な地域に及び、7つの州の一部を含んでいる。アメリカの地域計画の歴史において、TVAの試みは前例のない規模のものであった。自然資源によって定義された単一の地理的地域において、州政府や自由市場ではなく、連邦政府が人間の福祉に対して直接の責任を負ったのは、これが初めてのことであったからである。



▲ 写真と地図を交えて、テネシーを舞台としたインフラ開発を開設
1953年までに、TVAは、工学(エンジニアリング)と環境がシームレスに統合された、いわゆる「機械的景観(mechanized landscape)」を創出することによってその目的を達成した。この環境の変貌は、3つの大規模なプロジェクト、すなわち3つの「マシーン(machines)」を通じて実行された。洪水調節と舟運に焦点を当てた「河川のマシーン(river machine)」、林業と土壌保全に取り組んだ「土地のマシーン(land machine)」、そして農村住民に電力を供給した「電力のマシーン(power machine)」である。
本展は、テネシー川流域における「機械的景観」のあらゆる側面を、「マッピング(地図化)」と「写真」という2つの平行したアプローチから検証する。地図は、それぞれのマシーンを構成する要素がどのように地域へ統合されていったかを示し、各マシーンが内包する空間的・時間的な論理を浮かび上がらせる。一方で写真は、「機械的景観」のただ中へと身体的に没入し、特定の場所に注意深く目を向けることによって撮影されたものである。これらの写真は、訪問者をその情景のなかに位置づけ、今日経験されるようなTVAプロジェクトの、物理的かつ空間的な顕現を浮き彫りにする。
■ TVAを通して日本を見る
TVAは特定の地域に根ざした事業でありながら、戦後、世界各地の地域開発のモデルとなりました。日本も例外ではありません。占領期以降、TVA方式は日本の「河川総合開発」の手本として参照され、国土総合開発法(1950年)や、只見川・北上川・愛知用水などの総合開発計画の思想的な背景となりました。ダムによる治水と発電、農村の電化と近代化という発想の多くは、TVAという原型と地続きにあります。
「誰が、どのような論理で国土をかたちづくるのか」という本展の問いは、日本の観客にとっても決して遠いものではありません。日本では国家に加えて鉄道会社が、沿線の宅地・商業・文化までを一体的に設計し、生活そのものをデザインしてきました。国家主導のTVAと、日本の国土開発や私鉄経営とを重ね合わせるとき、インフラは単なる技術ではなく、人々の同意を得ながら社会を編成していく営み、一種の「統治」として立ち現れます。会場となる芝浦もまた埋立と鉄道が形づくってきた景観であり、本展を通して足もとの風景を問い直す機会となります。
■ 著者トーク&レセプション [9/15]
両著者が、TVAの成り立ちと「機械的景観」の背景、そして地域開発が現代に投げかける問いについて語ります。トーク後はレセプションを予定しています。
日時 | 9/15(火)19:00~21:00(開場は18:00)
言語 | 英語・日本語通訳あり
定員 | 50名(参加無料)
予約 | Peatixのサイトから https://peatix.com/event/5137979
■ 著者プロフィール
マイカ・ルーテンバーグ(Micah Rutenberg)/テネシー大学ノックスビル校 建築デザイン学部 助教
大規模インフラの設計や技術が、地域の地理的構造や農村景観の理解をいかにかたちづくるかを研究。ミシガン大学でデザインリサーチ建築修士および建築学士を取得。2018年テネシー建築フェロー。ウッドベリー大学(ロサンゼルス)、アリゾナ州立大学で教鞭を執った経験もある。
アヴィゲイル・サックス(Avigail Sachs)/テネシー大学ノックスビル校 建築デザイン学部 教授・研究担当副学部長
建築史・建築理論を専門とし、米国のデザイン専門職を研究。デザインと研究の関係が建築実践の形成に果たす役割に関心を持つ。2018年に『Environmental Design』を、2023年にTVAのユートピア的理想と地域計画への変容を追った『The Garden in the Machine』を出版。
SHIBAURA HOUSE
