Designing Cities for All #2 - 過密都市でのコミュニティ実践

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アムステルダムの文化機関パクハウス (Pakhuis de Zwijger) が主催する、みんなのための都市をデザインするためのプログラム「Designing Cities for All 」にてSHIBAURA HOUSEがフェローとしてイベントを共同企画しています。このシリーズでは「つながりの(再)デザイン」を主題に、3回にわたるイベントの対話を通して「人」「コミュニティ」「都市」に焦点を当てていきます。

5月27日に行われた第2回目は、アムステルダム、ロサンゼルス/メキシコシティ、台北、東京のコミュニティ実践から、過密都市でのつながりのあり方を考えました。

▷(Photo credit: NDSM (LEAVE) SPACE FOR SPACE)

再開発とアートプロジェクト

アムステルダムで活動するペトラ・ヘック(Petra Heck)さんは、「NDSMワーフ」で様々な立場の人の声を反映したアートプロジェクトやフェスティバルを運営しています。ここでは文化芸術によるエリア価値の維持・向上が取り組まれています。

「NDSMワーフ」はアムステルダム北地区に位置する旧造船所の跡地を活用した10エイカーほどのパプリックスペース。1950年代にはヨーロッパ最大の波止場として知らた場所で、1980年代ごろになると再開発が進み、産業の中心地がアムステルダム中央からアムステルダム北地区に移動したことでインダストリアルな地域として発展しました。近年では高層マンションが建設され、居住者数は一万人にものぼる新興地区となっています。

▷NDSMワーフには企業、アーティストスタジオ、住居、レストランなどが集まり、新たな文化の中心地としても知られている (Photo credit: NDSM)

コミュニティベースプロジェクト「(LEAVE) SPACE FOR SPACE」では、変化の著しい地域での居場所の感覚(場所への帰属意識=ビロンギング)をテーマにインスタレーションが制作されました。ワークショップでは、昔からそのエリアに住んでいる地元民や近年オランダに移住した家族など、普段は別々のグループにわけられる人々が集まり、コミュニティに関する様々な質問を投げかけられました。アーティスト Morag Myerscough は、例えば新興住宅にすむゲイカップルが孤独感を感じているなど、地域の声を拾い上げて作品にしたそう。

タイトルになっている「(LEAVE) SPACE FOR SPACE」とは、空間を創造のためにのこしておくことを意図しており、人種やエスニシティ、経済的な背景、ジェンダー規範などを超えたつながりから地域の未来を考えるプロジェクトとなっています。帰属意識を考える上で、特定のグループがずっと場所を占有するのではなく一時的にいろんな人と使うことが重要であり、そこにこそアートが介入する余地があるとPetraさんは語ります。芸術文化を介したコミュニティ形成によって、多声的なパブリックの形を垣間みえるのではないかと感じました。

セラピストとしての都市計画者

オンラインで参加してくださった ホセ・リチャード(Jose Richard)さんは、メキシコ出身都市計画者、ソーシャルワーカー、パフォーマンスアーティスト。研究者としてはアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校の Othering and Belonging Instituteで「ビロンギング(帰属意識/居場所感)」をリサーチしています。ビロンギングは他者性と二項対立の構造で語られることが多いですが、ホセさんは誰かを排除せずに帰属意識を形成することに焦点を当てています。

そんなホセさんは「都市計画者はセラピストであり、都市はクライアントである」と捉えています。それは帰属意識の名の下でいくつもの闘争が起こっている現代で、都市に内在するトラウマを治癒することだと言います。アーバンプランニングは地域のメンタリティを組み立てることでもあり、人々の行動と構築環境の関係性をデザインすることでコミュニティエンゲージメントに働きかけることができると考えています。

▷パフォーマンスアーティストとしても活躍するホセさんは、都市のコレオグラフィーを問うことで、身体と構築環境の関係性を客観視し場所への共感力が生まれると言う (Photo credit: side street projects)

特にホセさん自身は「フッド(Hood=経済的に困窮し犯罪が多いエリアを表すスラング)」と呼ばれる場所で生まれ育った経験があり、資本主義の中でどのようにコミュニティの関係性を回復していけるのかというのも喫緊の課題だと語ります。また、ホセさんが活動するアメリカ西海岸のロサンゼルスでは、800万人規模のホームレス問題があるのだとか。これは60年以上前の「レッドライニング(Redlining=人種/エスニックマイノリティが多く居住するエリアに対する差別)」というジェントリフィケーションの皺寄せが「都市のトラウマ」として何世代にもわたって影響している例でもあります。

大きな都市の中でそれぞれの人が居場所を感じるために、ホセさんはつながりをコミュニティとしての知覚にスケールダウンすることが必要と答えます。例えばガーデニングを通して植物との関係性を築いたり、地域の集まりで周囲の人とのつながりを獲得したりと、自分を取り巻く「つながり」から都市の課題との関係を捉えることで「ビロンギング」の感覚を獲得していけると話していました。都市環境が大きな時間の流れに影響を受けていることを理解した上で、個人の生活への眼差しを捉え直していくことを学びました。

過密都市に子どもの居場所を

東京の事例として、SHIBAURA HOUSEの子ども食堂「月のキッチン」を紹介しました。芝浦地域も先述の「NDSMワーフ」と似通った歴史をたどっており、もともとは海岸沿いの倉庫街として発展しました。近年では再開発によって高層ビルが立ち並び、企業やファミリー層の新住人も流入し、少子化の波とは逆行するように新たな小学校も設立されています。

▷スタッフの松田さんとハッチには現場の声をインタビュー

「月のキッチン」は小学生から受験勉強に追われることの多い都会の子どもたちが、月を見上げながら他者とご飯を食べたり、自由に時間を過ごせたりする場所を提供したいという思いから立ち上がりました。

小学生のお子さんがいるSHIBAURA HOUSEカフェスタッフの松田さんは、放課後に塾に行くまでの間にコンビニでご飯を済ませる小学生や、共働きで忙しい家庭の子どもの孤食問題など、「子どもの居場所」についての課題を肌で感じる機会があったといいます。「月のキッチン」を始めて半年ほど経ち、だんだんと親同士や年齢の違うこどもたちの間でも新たなつながりができてきました。一昔前の「地域で子どもを育てる」という価値観とは距離のある都市生活の中で、どのように第三の居場所として子どもや子育て家庭を見守っていけるのかを考えています。

文化事業スタッフのハッチは、「月のキッチン」が机に向かうだけでは獲得できない感覚的な学びを、子どもだけでなく大人にも提供できる場としてさらに広げていきたいと話してくれました。最近では地元の高校生による英語教室や、ダンサーのスタッフ Aokidさんとシャンさんをはじめとしたダンスワークショップも開催しています。地域に根づいたかたちで、SHIBAURA HOUSEのネットワークを活かした価値提供ができればと期待が込められました。

都市でのライフスタイルをデザインする

台北の実践として、 SHIBAURA HOSUEのパートナー団体 Alifeの代表 ジャスティン・ユー(Justin Yu)さんの活動を紹介。ビジネスオーナー、投資家であるジャスティンさんは都市のライフスタイルに関わるスタートアップビジネスをいくつも手がけてきました。今回は、なかでもPlan b とAlifeとしての活動に焦点が当てられました。 

▷「ParkUp」を手掛けたのは、ジャスティンさんのビジネスのひとつである持続可能な発展のためのコンサルティング会社 Plan b Inc.(Photo credit: Alife Holding Co.,Ltd.)

まず紹介したのが、使われていない空き地を公園としてリノベーションし、公共空間として市民に開放するための「ParkUp」というプロジェクト(2017年グッドデザイン賞受賞)。WHOが発表する健康な生活に必要なオープンスペースは一人当たり9㎡ですが、台北では5.32㎡とかなり限られていることがわかります。そこでジャスティンさん率いるPlan b Inc. は台北市からの依頼で、165㎡以下の小さなスペースを対象に、インクルーシブデザインを応用し、地域に根付く公園を設計しました。パブリックな視点からの都市生活のデザインといえます。

その後、より包括的に「新たな都市生活のエコシステム」を生成することを目的としたのがAlifeという事業。ワーキングスペース、商業スペース、居住空間などを総合プロデュースし、持続可能な発展に基づいた次世代のライフスタイルを提案しています。特徴的なのが、サステナブルな小売業(例えば掃除業者やタピオカティーのお店など)への投資やM&Aを通して、サステナブルな生活につながるビジネスのネットワークを拡大していること。ビジネスの視点からライフスタイルをデザインすることで、都市の中で新たなつながりをもたらしています。

おわりに

今回のイベントは、5都市にも及ぶコミュニティ実践例を通して都市におけるつながりについて再考する機会となりました。個人的にはこれまで都市やコミュニティという言葉がなかなか捉えにくいものという印象があったため、少しずつ噛み砕いていくことができたのではないかと感じました。それぞれの場所を大きな時間軸で俯瞰し、住んでいる人の顔を知っていくことで、重層的でありながらもパーソナルに都市コミュニティをイメージしていけると知りました。SHIBAURA HOUSEのコミュニティスペースとしての活動でも、地域に根ざすことの意味をもっと探ってみたくなりました。

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