私たちは一体何と闘っているのか-上映会とダイアログセッションを終えて - SHIBAURA HOUSE
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SHIBAURA HOUSEスタッフ

私たちは一体何と闘っているのか-上映会とダイアログセッションを終えて

 12月10日の世界人権デーに合わせて、毎年人権をテーマとした映画をセレクションし、各国へ提供しているオランダ・ハーグ発の映画祭 Movies that Matter。今年もMovies that Matterとオランダ王国大使館の協力のもと、SHIBAURA HOUSEでは『The Law of Love』上映&ダイアログセッションを行いました。

『The Law of Love』は、チェコ共和国における同性婚法制化に向けた、4年間にも及ぶ長い闘いを映し出したドキュメンタリー。チェコではほとんどの人が同性カップルの結婚の平等に賛成しているにも関わらず、保守層の政治家や宗教右派たちの反対運動によって法制化への議論は先延ばしを繰り返し、このドキュメンタリーの後も未だに実現には至っていません。チェコと日本では社会的な文脈や歴史性が異なるものの、「ルールを変える」ことにどれだけの戦略と忍耐が必要か、闘いの中に渦巻くもどかしさには共通するものを感じます。

映画に出てきた活動団体「Jsme Fér(「我々はフェアだ」)」のミーティング。現在もメディアでの発信を行っています。https://www.jsmefer.cz

 ダイアログセッションでは、映画の感想に始まり、日本特有の課題、宗教や文化的なアイデンティティと人権とをどう両立していくか、若い世代が多様性についてどのような感覚を持っているかなど、それぞれが自身の経験や思うことを共有する時間になりました。

参加者は、国内の活動家、映画関係者、各国大使館の方々、大学生、テーマに関心を持っている方など。

 印象的だったのは、「日本で活動していると、まるで見えない相手と闘っているように感じることがある」という活動家の方の言葉。過激な反対派の振り幅が大きいのは日本とチェコで共通している部分があるけれども、日本の場合は直接的な批判や攻撃に晒されることは少ない一方、蓋を開けてみたら反対といった「議論の余地を作れない」ことが多いそうです。また参加してくれた学生からも、「多様性が若い世代でトレンドになっているものの、実際どういった課題があって何を乗り越えていかなければならないのか、という具体的な話までにはならない」といった声も挙がりました。共通認識を持つことはできても、深い議論にまで発展しないもどかしさは、テーマに関わらず感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。

 それを受けて、戦略は有効だと思う一方で、自分の考えを表明し他者と向き合う経験を作り出せているかどうかということも、政治的な意思決定に大きく影響しているように感じました。そのような土壌を私たちは日常の中に作ることができているでしょうか。それは単に反対派と闘うことだけではなく、自分が社会の一部としてどうありたいか、次の世代にどんな社会を引き継いでいきたいか、という大きな問いに対する闘いに繋がっているように思います。

 その上でロビーイング活動(誰と活動を共にするか、どんな論調で話をしていくか、どんな色の服を着るかなど)は、今後の参考になりそうです。映画の中には「全国青年議会」なるものが登場しました。若者たちが自身の要望や政治的テーマに取り組むためのものです。可決されたら決議書が作られ、各省庁にも意見書が送られます。自分たちの声が届いていると実感できる機会が設けられていることも大事だと思いました。

 日本国内でも同性婚をめぐる状況は日々変化し続けています。SHIBAURA HOUSEのある港区で2020年4月から導入されている「みなとマリアージュ制度」のほか、東京都でも2022年11月から「東京都パートナーシップ宣誓制度」の運用が開始されたばかり。またイベント実施の2週間程前には、同性婚を巡る裁判*において同性カップルが家族になる制度がないのは「違憲状態」と東京地裁が見解を示しました。

*東京地裁は30日、日本で同性婚が認められていないのは違憲かつ差別的だとして同性カップルらが損害賠償を求めていた裁判で、同性婚が認められていない現状について、現行法が憲法には違反しないとの判断を示した。一方で、同性パートナーと家族になる制度がないのは違憲状態にあると指摘した。

BBCニュース(2022年12月1日の記事)より
https://www.bbc.com/japanese/63818144

今回サポートしてくださったオランダ王国大使館の公使テオ・ペータースさん。前進や後退を繰り返す日本の状況に対して、エンパワーメントできる機会を作れないないだろうか、とこの映画を選んだのだそう。

日本の場合は、民法や戸籍法における「夫婦」の記載が争点となっており、すでに「差別を解消する」という文脈だけではない段階にいるように思います。新しいルールを作るというよりも、現行の法律や解釈をどう変えるかということが糸口になりそうです。そしてそのためには、対話し発信し続けることが必要なのだと改めて実感しました。

参加してくださったみなさん、ありがとうございました。

元行まみ

Tomaki Maedaさんによるブログ- https://tomaki.exblog.jp/32843905/