
地域を変えるドーナツ
オランダ王国大使館と協働し、港区を舞台にして2017年からスタートした「nl/minato」。
nl/minatoではこれまで、共生社会をテーマに、オランダのユニークな公共政策やボトムアップ型の活動を日本に紹介。対話を通して参加者と共に学びあうプラットフォームを形成してきました。
コロナ禍や災害、戦争など常に変化の中にある私たち。2022年から新たに立ち上げた「nl/minato for Doughnut City」では、オランダのアムステルダム市が世界で初めて自治体の政策として採用しているドーナツエコノミーという思考法を学びつつ、人々が暮らしていくための社会的基盤と環境問題を両立させる地域社会の姿を創造します。
ドーナツエコノミーとは?
ドーナツエコノミーは、イギリスの経済学者ケイト・ラワース氏が2011年に提唱し、図式化したもの。自然環境を破壊することなく、社会的公正(貧困や格差のない社会)を実現し、自分の身の回りから地球上の全ての人が豊かに繁栄していくことを目指すための方法論です。図のようにドーナツの形をしたイメージを用いて説明されることから、ドーナツエコノミーと呼ばれるようになりました。

一方で外側の円は、オゾン層・空気汚染・土壌・海洋など、地球環境を再生可能な範囲に留めるための9つの生態学的な上限を示しています。
ドーナツは、地域の過不足や目標達成度を可視化するツールであると同時に、人々の経済活動がもたらす環境負荷と人々の暮らしやすさのバランスを保ちながら、緑色の部分(=ドーナツの食べられる部分)の範囲内で生活するには何が必要か、問いをもたらします。
都市に潜む課題 ー港区のドーナツをつくる
nl/minato for Doughnut Cityでは今回、SHIBAURA HOUSEが拠点を置く東京港区に焦点を当てます。港区では急激な人口増やコミュニティの希薄さなど、都心ならではの地域課題が多く存在します。
私たちは今、そんな地域の現状を改めて理解することから始めています。リサーチやヒアリングを通して港区特有の課題を抽出し、今年の秋にはシティーポートレート(=現在の都市の姿)としてまとめる予定です。港区独自のドーナツをつくり、イベントやワークショップ、政策提言などユニークな提案や実験を行います。またこのリサーチをきっかけに新たな横の繋がりを作り、地域のことを共に考えていく仲間を増やすことも目標としています。
なぜドーナツなの?
近年SDGs(=持続可能な開発目標)やサーキュラーエコノミー(=循環型経済)といった言葉を聞くことも多くなってきました。SHIBAURA HOUSEとしてドーナツエコノミーに対して特に共感しているのは、「全体を見渡す視点」と「長期思考」です。
全体を見渡す視点
物事には様々な側面があり、一つのみを切り取ってしまうことで異なる立場や物事への影響が見えなくなってしまうことは往々にしてあります。全体を俯瞰し、他の課題との関連を考えることで、より良い糸口が見つかると考えます。一見関連のないトピック同士が実は深く関係していることも。多角的に見ていくことで、各課題に対して活動している人の連携を促します。
長期思考
現在私たちが身を置いている社会や環境も、長期的な時間の中での積み重ねの結果だとすると、私たちは未来の世代に向けて何を残すことができるでしょうか。ドーナツは一過性のものではなく、常に変化し続けるものとして、100年後のドーナツは一体どんな形をしているか、私たちがどんな形を描きたいのかを想像していきます。