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妹島和世さんと振り返る、建築と運営の9年間

建築が社会の変化にどう対応していくか

I:東日本大震災があって、妹島さんを含め建築家の方々にとっても、9年前がひとつのターニング・ポイントだったかと思います。それからものの見方が変わったり、妹島さんにとって「建築」という言葉に対する意味合いの変化を感じることはありますか?

S:震災の時は、私としては「人間というのは、動物なんだ」ということを一番思わされました。自然とどう付き合うか。自然は圧倒的にありますから。津波で流されるのを見ているしかできなかった。それが一番ショックでしたね。

そうすると、建築も自然とうまくやるというよりは、みんなが一緒に暮らすまちを作る一部分としてどんなあり方があるか、ということを思うようになりました。コロナになってからは、みんなバラバラに過ごしましょうと言っても、本末転倒かなと思ってしまいます。問題を起こさないで、どうやってみんなで一緒にいられるかということを、それぞれの分野の人が考えられたらと思います。

先ほども言っていましたように、がんじがらめな中で設計せざるを得ない状況を作るのではなく、それぞれの人がもう少しリスクを受け入れて、みんなでなんとかやっていける場所やまちを作りましょうよという意識を持たなければならないと思います。

機能しない建築にならないために

I:自転車でよく新しい国立競技場の脇を通ることがあります。例えにして申し訳ないんですが、コロナになって、結果としてほとんど機能していないわけですよね。そもそも建築の目的がスポーツとかオリンピックという単一のものやシンボルのみに終始してしまっている。もしあそこにもっと違う要件定義があったら、と考えてしまいます。

S:確かに今ふと思ったんだけど、公園になっていて、誰でも入ることができて、競技をやらないにしてもみんなに開放してもらえれば良かったんですよね。

I:例えば災害などが起こる際にも、意外と逃げ場にもなりますよね。そういうものに対応できるような方向性が、施主側のリクエストとしてあれば、建築のあり方も変わってくるような気がします。妹島さんの提案はそれに一番近かったと思うのですが。

▲新国立競技場「SANAA +日建設計」案 [提供: SANAA]

S:そうですよね(笑)。今建築はあるフレームの中での完成度だけが求められすぎていて、それが少しでもずれてしまうと使いものにならなくなってしまうケースがよくあるように思います。

I:当たり前ですが、建築って元々物質的だったり固定的なものじゃないですか。これだけ世の中が変化していて、ではその変化にどう対応するかといった時に、すごく難しい。でも逆にそういったことを考えれば考えるほど、違うレベルの建築みたいなものがいつか見えてくるんじゃないかなと思っています。

S:そうですね、それは面白い。使う人が色々なふうに使いたくなる建築。そしてそれを許容できる建築というのがあるのではないでしょうか。