
元行 まみ / Mami Motoyuki


映画を通して考える、自分と異なる他者との向き合い方
12月10日は世界人権デー。人権をテーマとした映画をセレクションして各国へ提供しているオランダ・ハーグ発の映画祭 Movies that Matterの一環で、『海に向かうローラ』上映&ダイアログセッションを行いました。SHIBAURA HOUSEと渋谷にあるシアター・イメージフォーラム、オンラインでの実施。 『海に向かうローラ(原題:Lola vers la Mer)』は、トランスジェンダーの少女ローラとその父親フィリップを描いたロードムービーです。ぶつかり合うばかりのフィリップとローラですが、母の死や道中での人々との出会いを経て、ゆっくりと関係を再構築していくふたり。お互いを想う反面、’相手を完全には受け入れられない’ という葛藤に対してどう向き合えば良いか、映画を通して問われているように感じます。 ダイアログセッションの時間では、映画の感想と2人の未来がどうなっていくか、想像したことを共有しました。また、「違うこと」や「分かりあえなさ」についても考えてみました。自分とは違う他者とどう向き合うか。分かりあえなさと出会った時、自分はどうありたいか。自身の経験をもとに、今後のために活かせそうなヒントを話し合いました。 SHIBAURA HOUSE現地では久しぶりのイベント。生身の人同士が対面して話をする際に感じる、エネルギーの強さも改めて感じました。最後に他の人にもシェアしたいキーワードを付箋に書いてホワイトボードに貼っていきました。個人的に印象に残ったのは、「(どうして)目に見えないことが多いのに目に見えることしか信じないのだろう」という付箋。映画の中のテーマにも、日常に立ち返ったときにも共通する問いであり言葉だなと感じました。 オンラインでのダイアログセッションでは、より深く話ができたように思います。今回みなさんと考えた問いには正解があるわけではありませんが、「異なる」ことへ歩みより続けること、諦めないことも大切だと感じました。 実は今回の日本語字幕は今回のこのイベントのために制作したもの。参加者の方からは、良い映画だったのでもっと広まってほしい!という声も。トランスジェンダーを題材にした映画も日本で見れるものは数少ないので、今回のような機会も増やしていけたらと思います。

モヤモヤを辿った先にあるもの
共生や多様性をテーマに、日頃感じるモヤモヤや気になっていることを共有しながらおしゃべりするお茶会「共生のお茶会 Kizuki場」を定期的に行っています。このお茶会は、nl/minato2018*の市民メンバーである梅木さんが定期的に開催していたお茶会をきっかけに、有志で立ち上がった企画。分野を超えて学び合うことや、横断的に繋がりを作ることも目的としています。*nl/minatoについてはこちら 先日は自分の体験に基づいて話していくうちに、地域コミュニティの話と婚姻制度の話になりました。ある参加者は、自身が歳を重ねることによって、世代が違うコミュニティに対して感じていた距離感が縮まり、いつでも弱い立場になり得ると意識してから前よりも寄り添えるようになったと言います。 一方で遠方から引っ越してきて、町内会に入ろうとしたものの、すぐに引っ越すという理由で地域の輪に入れなかったという体験談も。会費や補助金等を使っている自治会・町内会等もある意味行政の一環と言えますが、意思決定の構造が限られたの人のものになってしまうことで、新しい参加者も減り活動も活性化しない悪循環に陥っていることもしばしば。「もっとこうしてほしい/こうしたい」という声を上げることも大事なのではないかという話になりました。 婚姻制度については、夫婦別姓が選択できないことで、結婚に踏み切れないという話や、離婚したら2回も名字を変更することになり、あらゆる手続きをする度に経緯を説明しなければならず、プライバシーを侵害されている気分になったという話もありました。 同性パートナーシップも含め法律上で結婚していないことで、パートナーに何かあった時に家族と認められず、治療方法などを選択できないケースもあります。臓器提供カードのように意思表示できるものや、信頼している人をあらかじめ指定しておけるようなものがあると良いのでは、というアイデアが出たりもしました。 モヤモヤしていることの元を深く辿っていく作業をしていると、個人の意識のみならず、法律や制度の問題に知らず知らずのうちに紐づいていることに気づきます。nl/minato2018で招聘した須川咲子さんが繰り返していた「Personal is Political(=個人的なことは政治的なこと)」という言葉が、イベントが終わってからもずっと心に焼き付いています。 必要な支援や繋がることができたり、市民側からのアクションで制度を変えるための可能性を探れるコミュニティのあり方などを、引き続き考えていきたいと思いました。

イベントスペースの予約システムが新しくなりました!
ウェブサイトリニューアルに伴い、レンタルの予約方法(RESERVA)も新しくなりました。以前よりわかりやすいシステムになりましたので、ぜひご活用ください。 主な変更点と注意点をお知らせします。 ▼主な変更点即時予約制で、予約確定までのフローがスムーズに仮予約は行わず、ご予約いただいた時点で予約が確定するシステムになりました。空き状況が一目でわかるようになりました。カレンダーで空き状況を確認しながら予約できるようになりました。詳しい手順についてはこちらをご確認ください。 ▼予約時に特にご注意いただきたいポイント– レンタル料および備品の使用料金など、一部改定いたしました。– 初めて利用する場合は、お申込前に下見(事前予約制)をお願いしております。– ご予約完了後は支払い義務が発生いたします。 ◎ご予約はこちらからレンタル予約専用システム(RESERVA)https://reserva.be/shibaura*会員登録すると、次回以降入力の手間が省けて便利です。ご質問がありましたら、メール(support@shibaurahouse.jp)までお送りください。

アート・オブ・モデレーション -理論と実践で考えるモデレーション-(無料ダウンロード)
プロのモデレーターに学ぶ、議論の場でのスキルやテクニック! 『アート・オブ・モデレーション 理論と実践で考えるモデレーション』は、話合いの場で参加者の意見をスムーズにまとめるオランダのプロのモデレーター、バルト・コゼイン氏の講座を元にした冊子です。2019年7月にnl/minatoでコゼイン氏を東京へ招聘して行ったワークショップをきっかけに、日本語版を制作しました。 コゼイン氏は公共の場でのディスカッションやディベートに特化し、市民参加の会議に関するアドバイス、モデレーターの教育・指導などを行っています。東京で行った2日間のワークショップでは、実際のモデレーターの振る舞い方や、その場の力関係の読み取り方、状況に応じた細かなテクニックまで、コゼイン氏が培ってきたモデレーションの哲学に触れることができました。 質の高いディスカッションをするために、イベントの目的を明確し、参加者から対話を引き出すためにはどんな方法や形式があるか。参加者の態度や集団心理の機微をよく観察し、モデレーターとしてどのタイミングややり方で介入していくか。コゼイン氏は常時、理論的な説明のみならず、時に即興的なエクササイズや実践を織り交ぜながら、参加者がそれぞれ自分で学び取ることができるようにサポートしていました。 彼が今まで培ってきたスキルやノウハウに加え、ワークショップ参加者の感想やイベント後のQ&Aを加えて収録し、当日の内容や臨場感が伝わるようにまとめています。nl/minato2019のアーカイブに添付して配布している他、データのダウンロードが可能です。ぜひご覧ください。 2020年9月初版発行著者:バルト・コゼイン翻訳者:池田哲発行者:SHIBAURA HOUSEデザイン:武田昌也編集:柴田直美編集協力:清水美帆助成:オランダ王国大使館

トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド
外国人クリエイターの眼から見た、独断と偏見でつづる超主観的東京論! 『トーキョー・トーテム 主観的東京ガイド』は、諸外国のデザイナー、アーティストをはじめ、社会科学やアーバンリサーチの研究者が東京を観察して得たものをつづった、とても主観的な東京のガイドブックです。ガイドといっても、美味しいレストランや楽しいスポットが紹介されているわけではありません。東京での常識そのものが、彼ら著者の興味の的であり、それを外国人の目線で分析したとてもユニークな本です。 ▲ Amazonでも購入可能です(画像をクリック) 企画、編集、制作をしたのは、アムステルダムに拠点を置くリサーチラボラトリー、Monnik(モニック)。2012年に来日した彼らは、SHIBAURA HOUSEと共に「発展の止まった都市」の典型である東京を題材にした、11日間にわたるワークショップ「Still City Project」を企画しました。 話し合いを通じて「自分たちが知りたいのは、この巨大都市東京で個々人がいかにしてここを『HOME』、つまり居心地のよい自分の場所と感じられるのか、である」という認識が共有されます。ワークショップに参加した46人の執筆者が東京を『HOME』と感じるヒントとなるトーテム(Totem=道しるべ)を、それぞれの手法(エッセイ、リサーチ、マップ、写真、ポエム、マンガ)で表現する、というのがこの本の趣旨です。 是非、46人の著者の目を通した東京をご覧になってください。そこには、銭湯通、コンビニ研究者、建築家、地理学者、都市散策者がいます。建築家のJulian Worrall、アーティストArne Hendriks、Jan Rothuizen、都市学者Christian Dimmer、人類学者Gavin H. Whitelaw、銭湯通のGreg Dvorakも著者に名を連ねています。また、外国人ばかりではありません。社会デザイン学者の三浦展、スリバチ学会の皆川典久、建築家の吉村靖孝、エディターの深澤晃平ほか、多くの魅力的な著者にも参加いただいています。全コラムに日本語の要約も掲載しているので是非手に取ってみてください。 TOKYO TOTEM特設サイト

「What Design Can Do: No Waste Challenge」オンライン ワークショップ

OPEN!FURNIUTRE 2019
家具から生まれる小さなパブリック OPEN! FURNITURE(オープン! ファニチャー)は、街歩きや家具の制作、アートイベントなどを通して、港区のパブリックスペースの新しい可能性を発見するプロジェクトです。2019年度は区内のコミュニティスペースや神社、個人商店などと連携。まちの中を舞台としながら、それぞれのスペースで誰でも使える家具を製作しました。「OPEN! FURNITURE」は家具をコミュニケーションツールとして、さまざまな人達が集う場所をつくることをコンセプトにしています。 2018年度に行った運河沿いのプロジェクトを進めていくうちに、まちのいたるところに、公共的に使える隙間や余白のような場所が存在していることに目が向くようになりました。まちの人も「こんな風に使えれば良いのに」「新しいコミュニティやこんな活動ができるのではないか」という思いはあるものの、実際にはどのようにそこに至れば良いかわからないという声もあります。 2019年の「OPEN!FURNITURE」では、昨年の運河で行ったプロジェクトと同様に、家具の活用を続けながら、新たな拠点を発見し、公共的に使えるベンチを様々な場所に設置していくプロジェクトを行うことにしました。また市民の方々と一から一緒に進めていくことで、彼ら自身がまちに関わることに対する気持ちや誇りを醸成していくことも、プロジェクトの一つの意義としています。 OPEN CALL[9.13] 連続的にベンチを配置することで、よりまちの変化を認識できるよう、芝浦エリアと三田エリアを中心にリサーチ。屋外に設置する家具の日常的な管理と、自分たちだけのためではなく公共的にも使用できるよう設置することを条件に、協力先を募りました。手を挙げてくれたのは、神社や個人商店やコミュニティスペース、地域包括センター、私有地の一部など。全12箇所の協力先と、その場所を普段利用する人にヒアリングを行いながら、設置場所やデザイン・寸法などを決めていきました。 WORKSHOP[10.19] プロジェクトの主旨や大切にしていることを伝えるとともに、石巻工房の千葉さんのレクチャーのもと、市民参加型で各協力先の家具を組み立てました。参加者同士3-4人のチームに分かれ、工具の使い方や組み立て方を一工程ずつ確認しながら、1チームで2台作ります。最初は電動ドリルを握ったことがなかった、という参加者も、いざ2台目を作る頃にはお手の物。石巻工房と「OPEN!FURNITURE」の焼印を押し、チームで制作したものにはそれぞれのサインを入れて、完成させました。 制作後は早速協力先へ設置しに行きます。一部のベンチは、制作者から協力先の方へと顔の見える形で直接受け渡すことができました。芝浦エリアと三田エリアで合計22台のベンチを設置しました。 OPEN!SUMMIT [11.8] ベンチが置かれた後実際にどんな反応があったか、プロジェクト全体を振り返ると同時に、まちに対して今後、どのような施策や取り組みがあったら良いかを話し合いました。 大きな気づきとしては、「公共性」をテーマとしていながらも、今回ベンチを設置できたのは全て私有地で、許可や責任などの問題から実際は公共空間や公開空地には置けないという矛盾。(バス停の前に待つことのできるベンチが欲しい、というニーズはあるけれども、公道に置くのは難しく、実際は公道を挟んだ私有地にベンチを置くことになった例など)パブリックとプライベートの間にある境界線を曖昧にするようなデザイン・都市計画の必要性を実感しました。 現場で感じた難しさを共有していくうちに、なぜそのような制限があるのかを辿っていくと、日本の広場は特に1960年代の安保闘争の影響で場所や建物を占拠した歴史があるので、大勢が集まれないよう意図的に細分化してデザインしているといった政治的な背景も明らかになっていきます。そうした経緯を理解した上で、改めて市民がまちにどう関わっていくかを考えていく必要がありそうです。 参加者からも地域の人々で独自に境界線を越えていくような仕組みを作った事例や、長期的変化を戦略的に見据えた短期な社会実験=タクティカルアーバニズム(ゲリラアーバニズムの)の国内外の事例を紹介していただき、来年のプロジェクトに活かせそうなアイデアやヒントを得ることができました。 OPEN!FURNITUREのWEBサイトはこちら

nl/minato アーカイブ
SHIBAURA HOUSEとオランダ大使館の協働プロジェクト、nl/minatoが毎年発行しているリサーチ・イベントのアーカイブです。下記よりダウンロードできます。nl/minatoとは? 2017年アーカイブ – LGBT・ジェンダー・メディアの3つのテーマについて、基本的な知識をリサーチ– オランダの先進的な取り組みや考え方について学ぶ– オランダと日本が現在抱えている課題とその背景にある制度や歴史を知る– 対話を通して身の回りで感じる違和感を意識したり、自分事として感じる・考える 2018年アーカイブ – 2017のテーマを引き継ぎながらも、様々な社会課題に通ずる「共生社会」について考える– オランダのユニークな発想の源や、市民たちの価値観がどのように醸成されるかを探るため、市民メンバーと共にオランダへリサーチ旅行へ– 帰国後、現地での学びをヒントに、ジェンダー、教育、移民、福祉などの観点からイベントを実施 2019年アーカイブ – 運営側としても抱えている課題から、「対話の場を活発にするモデレーション」、「デザインと社会課題を結ぶプラットフォーム」、「自分たちの活動を多くの人に伝えるための戦略」をテーマにイベントを開催– 共生社会に関するテーマで、体験型のイベントを地域の団体と共に実施 *本誌に添付している、別冊Art of Moderationについてはこちら*ミラツクが取り組んだリサーチ&メディアラボにおいて、市民メンバーが「オルタナティブな未来」をテーマに行ったインタビュー調査と分析はこちら
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