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ボトムアップで築く、私たちのパブリック

 はじめてここを訪れた人は、まず建築に驚くことでしょう。その外観はきわめて強いメッセージを放ちます。全部で7つある階層は透き通るようなガラス張り。内部にいる人の動きは、外から見えるようにデザインされています。各階は大胆なスキップフロアで連続的につながり、空間全体の一体感が表現されます。設計は世界で活躍する建築家・妹島和世さんが手掛けました。

夜の芝浦
開放的なフロア設計
▲周囲の風景が内部空間に溶け込む、とても透明感のある設計です

 SHIBAURA HOUSEは東京都港区・芝浦にある、社屋兼コミュニティスペースです。会社の創立自体は1952年ですが(旧・広告製版社)、2011年、社屋の建て替えを機に、SHIBAURA HOUSEとしてリニューアル。「芝浦にある、ひとつの家」というコンセプトです。

 ここは近所に暮らすこどもたちをはじめ、会社員、そして海外のビジターも集まるオープンなスペースとして運営しています。また、料理や英会話のクラスから国内外のゲストを招いたレクチャーまで、年間100回をこえる文化的プログラムも実施してきました。とくに1Fは誰でも無料で出入りができる、公園のような場として開放。ランチタイムには近所の人々で賑わう光景をみることができます。

こどもたちが立ち寄るスペース
▲フリースペースで、こどもたちが学校の宿題をする姿もよく見かけます

 SHIBAURA HOUSEは、一企業が地域社会との関係を築くためにスタートした、社会実験のようなプロジェクトでもあります。自分たちの会社がある場所だから、もっと面白いエリアにしたい、自分たちにもっとできることがあるのではないか。そのような思いから企画が始まりました。オープンからすでに9年が過ぎ、いまでは国内外問わず、多くの方々が足を運んでくれるようになりました。

友だちのような関係をつくる場に

 東京湾に面する芝浦エリア。かつては倉庫街、その後は典型的なオフィス街でした。しかし近年は次々と新しいマンションが建設され、単身者や若いファミリー層が暮らし始めました。いまでは、企業で働く会社員と、生活の場とする住民が混在する地域へと急激に変化しつつあります。

会社員が行き交う風景
▲毎日、多くの会社員がSHIBAURA HOUSEの前を行き交います

 しかし数万人の人たちが密集して生活していながら、隣の会社が何の仕事をしているのか、隣に住んでいる人が誰なのか、お互いについて知る機会はそう多くありません。それは私たち自身がこの地域で働く当事者として感じる、ちょっとした違和感でもありました。

 SHIBAURA HOUSEは、その違和感に対する私たちなりの提案といえます。知らない人たちがここで出会い、友だちのような関係が生まれていく。そのような場所になることを目指して日々運営しています。

運河沿いでの音楽イベント
▲運河沿いにパブリックな家具を設置する「OPEN! FURNITURE」。ミュージシャンやダンサーを招いたイベント「LAND FES」も実施しました

 最近では港区役所と連携して、SHIBAURA HOUSE以外の場所でもさまざまなイベントを実施できるようになりました。これからはトップダウンとボトムアップをうまく連携させながら、地域全体を視野に入れた取り組みにも力を入れていこうと考えています。

海外とのクリエイティブカルチャーのハブとして

 地域との関わりをつくる一方で、海外の人々との交流も意欲的に行なっています。とりわけ、アートやデザイン、建築といったクリエイティブの分野には重点を置いています。これは会社としての成り立ちが、広告という文化的・創造的な領域にあることと結びついています。

世界で最も古いLGBTの組織「COC」
オランダのクリエイティブディレクター、マルセル・カンプマン
▲オランダ大使館と協働して、さまざまなゲストを招聘。日本とオランダをつなぐ、文化的な窓口として活動しています

 誰でも迎え入れるようなSHIBAURA HOUSEの空間は、海外のユニークな活動を紹介する場としてもぴったりです。私たちは海外のグループや文化施設、大使館と連携しながら海外のユニークな人たちを数多く招聘。ワークショップやレジデンスといったプログラムを通して、彼らの活動を広く伝えています。

(2020.10.27)