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nl/minato_ジェンダー「Personal is Political -私の生き方、社会の在り方-」

オランダの取り組み、ジェンダーへの眼差し

オランダのアムステルダム市で文化プログラムを担当しているジンブレールさんからは、オランダでの政策や地方公共団体との関係性が、ジェンダーにおける課題にどのような影響を与えているのかということをテーマにお話いただきました。ジンブレールさん自身はジェンダーの分野おける専門家ではないものの、過去30年間アムステルダム市で働いてきた経験から学ぶ機会が多くあったといいます。そして現在、オランダでは女性の社会進出が当たり前になったものの、近年の課題として仕事と家庭内のワークバランスの乱れや介護の責務への負担差が広がっていることを挙げられていました。

ジンブレールさんは、オランダではシングルや同性婚の家庭も多くあり、ロールモデルは存在せずさまざまな家族の形態があることを共有してくれました

アムステルダム市の政策は、個人やコミュニティ同士で連携を図るよう仕組みを構築しているところが特徴的です。女性が経済的に自立することへ着目した政策では、就業や起業への支援だけではなく、家庭以外にも社会的・経済的なセーフティネットをつくること、そして企業やNGO、地方公共団体に支援をすることで、地域の課題をより身近に具体的に解決することを目指しています。地方団体との相互関係は、見えなかった課題を浮き彫りにしたり、実際に施策に落とし込む際に重要な役割を担っているそうです。またマイノリティコミュニティの中には女性が結婚や仕事について自己選択できない状況があり、彼らに対する積極的な情報提供やロールモデルを作るなど、孤立しないためのネットワークづくりに注力している印象を受けました。
ジンブレールさんは、ジェンダーにおける方法論や課題を他国とも共有しながら、連携を積み重ねていくことが今後の目標だと述べていました。

多様性を育むための実験と実践

日本の現状に立ち返ってみた時、近年の女性活躍推進政策は、成長戦略のために女性労働力の「活用」を積極的に進めながら、他方で、「女性手帳*」「3年間抱っこし放題*」に見られるように、妊娠・出産・子育てに関わる多くの問題を女性が担い、多様な生き方を否定するような形で進められている、と堅田さんは言います。また性別役割分業への取り組みは皆無であり、社会保障抑制とセットである従来の枠組みが変わっていないことから、女性活用の政策は、あくまでも成長戦略の一つであって、女性の身体の「植民地化」なのではないかと問いかけました。
この現状を打開するための提案として、個々の声をどのような形で社会に反映していけばいいのか、堅田さんからいくつかヒントをもらいました。

*3年間抱っこし放題:法定育児休業を最長1年半から3年まで延長する法案。その間のキャリア保証や生活保証はされていない。
*女性手帳:妊娠適齢期など、主に女性の体について必要知識や自治体の支援施策を記した手帳。いずれも、女性たちの激しい抵抗にあい、今のところ頓挫。

資本主義的秩序を考え直すヒントとして、「魔女になろう!」と提案する堅田さん

印象に残っているのは、「魔女になろう!」という言葉。須川さんのお話にもでてきた「Wages for housework movement」を例にあげ、家事労働の賃金を要求すると同時に、生産労働・再生産労働の両方を拒否する戦略をとっていたことに注目しました。彼女たちは、性労働が家事労働の中心であることを示し、愛の名の下に家事労働の無償性を受け入れるか・受け入れないか(= 不払い労働を拒否する売春婦、または同性愛の女性)で、女性が分断されてきたことを明示化しました。家事労働の拒否を通して女性の身体を植民地化しようとする権力から自由になるために、魔女になろう。再生産労働における議論は一見極論に見えますが、今まで当たり前に根付いてきた思想を可視化し、私たち自身がその本質を見極めて選び直す可能性を示唆しているように思います。最後に堅田さんは、全ての人がその生活に必要な所得を無条件で受け取れる「ベーシックインカム」を紹介し、自分の欲望を見つめ直すことも重要なのではないかと参加者に問いかけました。