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アムステルダムへ渡航して感じたこと~「違い」は「新しいアイデア」の源だ!~

BY 小田由美香

憧れのオランダ・アムステルダムへ

 9月1日、スキポール空港行きの飛行機に、修学旅行ぶりに国外へ出る私がいました。英語が不得意な私の渡航を後押ししてくれたのはnlminatoの皆さんと、オランダという国に対する強い憧れでした。

 ワークシェアリング、安楽死や同性婚、大麻、売春の合法化、子どもが世界一幸福な国、さまざまな切り口から、この国に対する注目が高まっていることでしょう。多様性に寛容な国と言われるオランダに、「共生社会」を実現するヒントをもらいに行ってきました。

[写真上]オランダでは同性婚が合法だ。LGBTQ+の当事者らが街を練り歩く「アムステルダムプライド」が毎年開催されている。

最初にお会いしたのは、アムステルダム市職員のザビーネ・ジルブールさん。アムステルダム市は行政レベルで、LGBTQ+をはじめとした多様性を尊重する必要性を認識しているそうです。     

nlminatoメンバーからの「共生社会のための政策にコストをかけることは、経済政策に比べて多くの人の賛同を得にくいのではないか」という質問には、「共生社会の実現と、経済の発展を相反するものとは考えていない」との回答が。多様なバックグラウンドを持つ人たちを受け入れることで今までになかった新たなアイデアがもたらされ、街がより発展していくと考えられているのです。

「かわいそうだから」、「差別してはいけないから」。そういったネガティブな出発点ではなく、ポジティブな気持ちで自分とは異なる人たちを歓迎する、アムステルダム市民の強かさが伺い知れます。

アムステルダム市は、国を越え、他の都市と友好的な関係を築くことにも注力している。ザビーネさんは昨年東京都を訪問し、小池都知事とも会談した。

アムステルダム中心部から西に進むにつれ、トラムにはアフリカ系や中東系の乗客が増えてくる。多くの移民や難民が住むこのエリアには巨大な社会住宅がいくつも建っており、まるで違う街にいるようだ。同じアムステルダムのなかでもコミュニティが分断されているように感じられた。

多様性の裏にある、複雑な問題

国際的なジャーナリストであり、自身もLGBTQ+の当事者であるボウ・ハンナさんからは、差別や偏見をなくすために何をすべきなのかを教えてもらいました。

現代の社会では、差別の形はより複雑になっています。例えば、アメリカの黒人女性が黒人男性よりも軽んじられていたり、ゲイコミュニティの中でも、白人のゲイからアジア人のゲイが差別されたりするそうです。

複雑に織り込まれた差別の糸が、より弱い立場の人を幾重にも苦しめ、問題を解決困難なものにしているのです。「白人」と「黒人」、「異性愛者」と「同性愛者」といった、表面的な「違い」にのみ着目して差別をなくそうとしても、この糸の絡まりをほどくことはできません。

[写真上]中東の人々向けに作られた、ミュージックビデオのようにおしゃれなLGBTQ+の啓蒙動画を見せながら、その地域の文化的な文脈に沿ったコンテンツを作る必要性を訴えた。

「もしもあなたが、あなたの属する社会を変えたいと思うなら」

活動家でもあるハンナさんは言います。

「あなたの社会の文脈で語る必要があります。西洋で上手くいったことが、他の国でも上手くいくとは限りませんし、西洋で正しいとされていることが他の国でも正しいという訳ではないからです。同性愛を禁忌とする価値観が西洋から持ち込まれる以前の日本に、衆道の文化があったように」

「共生社会」という言葉を、空虚なものにしないためにも日本なりの共生の仕方を考える必要があるのだと、感じさせられました。

「違いがある」という強み

ワーグは17世紀に測量所として建てられた、歴史ある建物です。今、この建物の中は、3Dプリンターや電動のこぎりなどが使える「ファブラボ」になっています。“技術をみんなでシェアする”というのが21世紀のデ・ワーグの役目なのです。

[写真上]歴史的な建物の中には、3Dプリンターなどの最新機器が並ぶ。子供向けのプログラミング講座も開講している。

ファブラボの活動に参加するのは、特別な人ではありません。さまざまな職業、人種、出身地の人がいち市民として共に研究し、製品を作るのです。ITエンジニアと服飾デザイナー、障害を持った人。異なるバックグラウンドを持つ人たちが、それぞれの視点で考え、それぞれが持つ知識や経験を共有することこそが、新しいものを生み出す原動力なのだ、と職員のポーリンさんは力強く語ります。

パーソナライズされた福祉用具を作るチームでは、取り外しやすいストーマが生まれました。

「スタートは、“ストーマを取り外しやすくしたい”という、ひとりの女性の個人的な要望でした。でも、同じような悩みを抱えている人は世界中にいます。だからこのプロジェクトは、彼女のためだけのものではないのです」

技術や経験だけではなく、“悩み”をシェアすることにもまた、価値があるのです。

市民向けワークショップの様子。「どうしたら良いかわからない。教えてくれる?」と周囲に投げかけられることこそが重要だ、とワーグの職員は語る。

日本でも、「多様性の尊重」という言葉が世に出てから久しいですが、現実のものとなっているでしょうか?もしかしたら、共同体の中に異なる存在が入ってくることに対して、拒絶はしないけれど積極的に歓迎まではしない。そんな具合かもしれません。

戦後、同質性の高さによって高度経済成長を遂げた日本人には、多様性に富んでいることが、社会にとっていかにプラスに働くのかについてのイメージを持ちにくいことと思います。ですが、ワーグのような場所があれば、異なるバックグラウンドを持つからこそ、それぞれの“強み”があるということを感じられるでしょう。

誤った「多様性が尊重される社会」にしないために

ここまで、「アムステルダムでは、多様性がポジティブに捉えられていて素晴らしい」と述べてきました。しかし、このレポートを書きながら、ふと思うことがありました。それは、「役に立つからという理由で多様性を歓迎するのは正しいのか?」ということです。

そもそも、人間は一人ひとり違いがあることからは免れず、多様性は当たり前に生じているものです。何かの目的のために尊重される、されないといったものではありません。特別な理由がなくても、存在していることそれだけで尊重されているはずなのです。

歓迎される多様性と、歓迎されない多様性とに選別される社会にならないことを祈ります。「多様性を尊重しよう」というフレーズが広がり始めている今こそ、裏にあるものを注意深く見定めていく必要があると考えさせられました。